毎年1月5日、豊洲市場ではマグロの初競りが開催されています。
この競りで、1億円を超える高値でマグロが取引されることも珍しくありません。
その中で、一番高値がついたマグロは「今年の一番マグロ」として大々的に報道されます。
そして、気になるのは、実際にマグロを捕った漁師さんが
この取引でどれだけの収益を得るのかという点です。
ということで、漁師さんの取り分に付いて調べました。
マグロ初競り!!『一番マグロ』を釣った漁師さんの取り分はいくら?
マグロの初競りで注目されるのは、
最高値で落札されたマグロを捕まえた漁師の取り分です。
通常、漁師は落札価格の8割以上を手にすることが一般的と言われています。
落札した仲卸業者は、競りを主催した築地市場に支払いを行います。
築地市場は手数料を差し引き、信用漁業協同組合連合会(信漁連)が管理する
漁師の口座に現金を振り込みます。
漁協の収益、箱代、運送費などの出荷コストを差し引いた残りが漁師の収益となります。
大間漁協の関係者によれば、漁師の収益は通常、8割以上になることが多いとのことです。
漁師の収益は大きな金額になることがありますが、
最高の入札価格を記録した経験がある漁師の一人は、
「所得税がかなり持っていく」と述べています。
実際の収益は経営規模などに依存しますが、税金を支払い、
最終的に残るのは入札価格の約6割から7割程度になるとのことです。
まとめると、
漁師の収益は通常、入札価格の8割以上
差し引かれる2割は、漁業協同組合や市場の手数料です。
大間漁連経由での出荷の場合
手数料として大間漁連が4%
青森県漁連が1.5%
築地市場が5.5%
を差し引きます。
その後、経費と税金が差し引かれて、
最終的に漁師に残るのは約6割から7割
となります。
漁師のコメントにあるように、「所得税がかなり持っていく」のが最大の懸念材料です。
課税所得 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円〜330万円 | 10% |
〜省略〜 | |
4000万円超え | 45% |
高収入者は、所得に応じて増額される税金を支払わなければならず、
年収が4000万円を越える場合、最高税率の45%が課せられます。
次に、2019年の初競りでのマグロの売却価格を挙げて詳しく説明いたします。
マグロ初競り(2019)過去最高値がついた『一番マグロ』はいくら漁師さんの手元に残ったか
2019年のマグロ初競りで、
過去最高値が記録された『一番マグロ』の落札価格と
最終的な手元に残る額について詳しく計算します。
青森県大間で水揚げされた278キロのクロマグロは、
1キロ当たり120万円という過去最高の3億3,360万円で落札されました。
この一番マグロの競りを制したのは、
寿司チェーン「すしざんまい」を運営する喜代村でした。
それでは詳しく見てみましょう。
青森県漁連: 約500万円 (1.5%)
大間漁連: 約1,334万円 (4%)
マグロの預かり業者: 約1,834万円 (5.5%)
このように、落札価格の89%が取り分として分配されます。
そして、3億3,360万円の落札価格から、
漁業協同組合や市場の手数料が差し引かれ、
漁師に残るのは2億9,690万円です。
その後、所得税が差し引かれます。
続いて税金が引かれます。
課税所得 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円〜330万円 | 10% |
〜省略〜 | |
4000万円超え | 45% |
所得が4,000万円を超えているため、最高税率の45%が適用されます。
税金を支払った後、漁師に残るのは1億6,329万円です。
したがって、最初の落札価格から手元に残る金額はかなり減少します。
マグロ漁には船の燃料代などの諸経費もかかるため、
純利益はさらに低くなるでしょう。
マグロ初競り『一番マグロ』の歴代の落札価格
過去のマグロ落札価格をご紹介します。
過去のマグロ初競りでの落札価格を振り返ります。
年 | 落札価格 | マグロ重量 |
2010年 | 1628万円 | 233kg |
2011年 | 3249万円 | 342kg |
2012年 | 5649万円 | 269kg |
2013年 | 1億5540万円 | 222kg |
2014年 | 736万円 | 230kg |
2015年 | 435万円 | 180kg |
2016年 | 1400万円 | 200kg |
2017年 | 7420万円 | 212kg |
2018年 | 3645万円 | 405kg |
2019年 | 3億3360万円 | 278kg |
2020年 | 1億9320万円 | 276kg |
2021年 | 2084万円 | 208kg |
2022年 | 1680万円 | 210 kg |
2023年 | 3604万円 | 212 kg |
通常、200kgのマグロの相場価格は約400万円です。
しかし、2008年には香港の企業である
「板前寿司ジャパン」の参入が初競りの価格を高騰させ、
その後「縁起物のご祝儀相場」としてマグロの価格が急上昇しました。
特に2013年には1億5,540万円という記録的な価格がつけられ、
初競りが一大イベントとなりました。
2014年には香港資本の「板前寿司ジャパン」が市場から撤退し、
落札価格が急落しました。
その後、「すしざんまい」の運営会社である”喜代村”が競りを続け、
2018年には初めて別の店舗である「鮨おのでら」に座を明け渡しました。
しかし、翌年には再び”喜代村”が過去最高の3億3,360万円で落札し、
続いて2020年も同様に成功しました。
結局、「すしざんまい」が落札額で記録を更新し続けました。
近年、1億円を下回る落札価格は稀であり、
初競りの結果には多くの注目が寄せられます。
特に正月休みに、億単位の落札価格がテレビで報じられると、
一般のサラリーマンたちの興奮が高まることでしょう。
高額でマグロが落札される理由
高価で落札される200kgのマグロの背後には、
何があるのでしょうか?
当然、これらのマグロは「すしざんまい」で提供される予定ですが、
その理由を以下のメニューを例に挙げて説明します。
- 大トロ: 398円
- 中トロ: 298円
- 赤身: 198円
これらの価格に比べてみると、
高額なマグロの落札価格が元を取ることは難しいことは明白です。
なぜなら、これらの高価なマグロが完売しても、
その価格では収益を上げることは難しいからです。
しかし、高額なマグロの落札にはいくつかの理由が存在します。
一つは、初物を店舗で提供できるという宣伝効果です。
これにより、「すしざんまい」のブランドと会社のPRが向上し、
以下のようなメリットが生まれます。
- テレビ番組などで取り上げられる
- ネットニュース記事になる
- ブログ記事やSNSで拡散される
広告料に関して、15秒のテレビCM広告が約50万円と言われており、
これだけの露出を得るためには巨額の広告費用がかかります。
そのため、3億円という落札価格は、
広告費用を含めても元を取ることが難しいことは確かです。
しかし、このような記録的な落札は「平成最後の落札」や「過去最高落札額」として歴史に刻まれ
、会社にとって貴重な宣伝効果となることで、
その価値が計り知れないものとなるのかもしれません。
特にネットニュースなどでは、
長らく残るため、3億円は実は安いとも考えられるのです。
マグロ漁師さんはサラリーマンより稼げるの?
マグロ漁師の世界では、高額な入札価格が注目されますが、
実際は成果に応じた収入が得られる過酷な職業です。
それでも、その困難さにもかかわらず、
多くの人が魅了されているのは、
夢を追い求めるからかもしれません。
特に、大間のマグロ漁師は裕福な人が多いと言われています。
例えば、200キログラムのマグロが400万で売れた場合、
所得税率20%を考慮すると手取りは約290万になります。
大型のマグロが獲れるのは主に8月から1月までの半年ほどの期間です。
この期間に毎月1本、200キログラムのマグロを捕獲できれば、半年で1800万を稼げます。
漁にかかる経費は1回あたり約5万円で、月に20日漁に出続けた場合、
半年で600万円になります。
経費を差し引いても、手元には1200万残ります。
半年間の稼働を考えると、なかなか魅力的に思える計算ですね。
ただし、実際のマグロ漁師の平均年収は約600万円ほどです。
漁には一人で出るわけではないため、収入は分配されることも考慮すべきです。
また、漁船ごとに成績に大きな差があるため、
成功を収める漁船に乗船できれば、
年収1000万円を目指すことは可能でしょう。
運に左右される要素も存在しますが、
データ収集と粘り強い分析ができる漁師は、
他の船よりも成功の確率を高めることができるでしょう。
まとめ
この記事では、マグロ初競りにおける漁師の収益に焦点を当てました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。