関東と関西、そして他の地域において、節分の食べ物には大きな違いがあり、
その食べ物にはそれぞれの意味が込められています。
節分の食べ物の多様性は、地域ごとの文化や歴史的な慣習に根ざしています。
今回は、なぜ節分の食べ物が地域ごとに異なるのかと、
各地域で食べられている具体的な料理を紹介します。
関東地方:麦飯、けんちん汁、しもつかれ
関西地方:恵方巻、いわし、福茶
その他の地域:落花生、こんにゃく、蕎麦、くじら、ナマコ
それぞれの料理が節分においてどのような意味を持つかもご説明いたします。
関東地方の節分の食べ物
関東地方では、かつて厳しい冬を越えるために食べられていた料理が、
現在も節分の食べ物として受け継がれています。
麦飯
江戸時代ごろから、関東地方では節分の際に、
厄払いの一環としていわしと麦飯が食べられていました。
麦飯は通常の白米よりも手ごろな価格で手に入り、
一般庶民にも利用されやすかったため、この習慣が広まったと言われています。
けんちん汁
かつて、関東地域では冬の行事で寒さをしのぐために、けんちん汁が飲まれていました。
年々、節分以外の時期に行われる行事が減少した結果、
けんちん汁が節分の食べ物として根付いたと考えられています。
けんちん汁は、根菜類(里芋、ニンジン、ごぼう、大根など)、
こんにゃく、豆腐など、多くの具材を含む精進料理です。
精進料理は通常、「肉や魚を使用しない」、「油で材料を一度炒める」ものです。
ですので、似た料理の豚汁とは異なりますね。
「けんちん汁」という名前は、鎌倉時代の建長寺で供された精進料理に由来し、
「建長→けんちん→けんちん汁」という経緯を辿ったと言われています。
寒い冬に体を温めるのに最適な料理ですね。
しもつかれ
しもつかれは、栃木県周辺の地域で節分によく食べられる料理です。
埼玉、群馬、茨城の県境地域でも見られます。
しもつかれの作り方は、油揚げ、大豆、
鮭の頭そして大根とにんじんをすりおろした物を酒粕で煮込んだものです。
ただし、郷土料理としても知られており、
地域によって作り方や味付けが異なることがあります。
外見は独特で、生臭さがあるため、
慣れない人にとっては好みが分かれるかもしれません。
しもつかれは、食材の無駄を出さずにほとんどを利用するため、
江戸時代の飢饉の時に、冬に収穫できるものを有効に利用し、
飢えをしのぐために食べられたという歴史があります。
そして、その災いが再び訪れないことを願っています。
関西地方の節分の食べ物
関西地方には、独自のユーモアあふれる伝統が節分の食事に受け継がれています。
恵方巻
恵方巻を節分に食べる習慣は、かつては関西地方に特有のものでした。
江戸時代に、商人たちが商売繁盛を祈って、
恵方に向かって巻き寿司を食べる風習が始まったと言われています。
当初、巻き寿司を切るのが面倒くさかったため、
切らずにそのまま食べるスタイルが確立しました。
1998年に大手コンビニが恵方巻を全国的に販売したことが、
恵方巻を節分の食べ物として一般化させた契機となりました。
恵方巻を食べる理由には、以下のような意味が込められています。
・鬼の金棒に見た目が似ているため厄除け
・巻き寿司に7種類の具材
(伊達巻、うなぎ、きゅうり、かんぴょう、たくあん、シイタケ、高野豆腐など)を入れ、
七福神のご利益を取り入れる
・恵方を向いて食べると、1年間健康に過ごせる
いわし
関西および西日本、特に奈良県周辺地域では、
鬼がいわしの臭いと煙を嫌うと信じられています。
そのため、節分には「身体を浄化する」という意味を込めて、
いわしを食べる習慣が平安時代に始まりました。
元々は柊鰯(ひいらぎいわし)として、
焼いたいわしの頭をヒイラギの枝に刺して玄関に飾って鬼除けや魔除けとして使われていました。
いわしを身体から邪気を追い出す手段として節分に食べる習慣は、
この歴史に由来しています。
福茶
福茶は、京都が発祥の伝統的な習慣です。
このお茶は節分だけでなく、健康と無病息災を祈願するために飲まれています。
福茶には湯飲みに黒豆、梅干し、結び昆布、山椒などの縁起物を入れ、
煎茶または熱いお湯を注いで作られます。
節分の日には、黒豆の代わりに炒り大豆を入れることが一般的で、
これは長寿の象徴とされています。
福茶の起源には、平安時代に「南無阿弥陀仏」を初めて唱えたとされる
空也上人の逸話が関わっています。
この上人は疫病の蔓延に苦しむ人々を救うために「十一面観音像」を制作しました。
この観音像のお供え物であったお茶を病人たちに飲ませたところ、
奇跡的に多くの人々が救われたという話が伝えられています。
当時、災いや疫病は鬼の仕業と考えられていたため、
節分に福茶を飲むことで邪気を祓う習慣が生まれました。
その他の地域の節分の食べ物
関東や関西以外の地域でも、個性的な伝統が節分の食事に残っています。
落花生
昭和30年代頃から、北海道、東北、九州の一部地域で、
大豆の代わりに落花生が豆まきに使用されるようになったと言われています。
この風習は北海道、東北、新潟、長野、宮崎、鹿児島など、広範囲に広がっています。
特に雪深い地域では、落花生は殻ごと使用され、
豆まきの後も簡単に見つけられるため、人気が広まったとされています。
宮崎と鹿児島では、農家が豊作を祈る風習があることから、
この伝統が根付いたと考えられています。
こんにゃく
こんにゃくを節分に食べる習慣は四国から始まり、その起源や始まりの時期は不明です。
こんにゃくは「おなかの砂下ろし」や「胃のほうき」と呼ばれ、
体を浄化する効果がある食べ物として知られています。
そのため、節分にこんにゃくを食べることは、一年の厄を払うという意味が込められています。
蕎麦
蕎麦を節分に食べる風習は、信州の長野県や出雲の島根県に起源を持つ文化です。
「節分そば」としても知られ、長寿と厄除けの効果があるとされています。
くじら
山口県では、節分にくじらを食べる習慣が広まっています。
下関市はくじら製品の生産・販売・流通の中心地であり、
1年の締めくくりに大きなものを食べることが縁起が良いとされています。
この風習は、「大きく健康に育つ」「志大きく」という意味で
大きな幸運と成長を祈る願いが込められています。
ナマコ
島根県隠岐では、節分にナマコを酢の物として食べる習慣があります。
ナマコは海底に積もった有機物を摂食する際に砂も一緒に摂取し、
不要な砂を排出する特性があります。
この性質から、年の終わりに体内の老廃物を排除する意味で食べられています。
地域ごとに節分の食べ物が違う理由は?
節分の食べ物が地域ごとに異なるのは、古くからの伝統や地域性が大きく影響しています。
この違いは、豆まきの掛け声「鬼は外、福は内」にも反映されており、
地域ごとに鬼に対する考え方が異なるからです。
一例を挙げると、以下のような地域別の掛け声があります。
群馬県の鬼石地域は「福は内、鬼は内」と言います。
この地域では「鬼が投げた石で町ができた」という伝説があり、
悪い鬼だけでなく良い鬼も存在するとの考えから、この掛け声が生まれました。
紀伊半島や伊勢志摩地域では「鬼は内、福は内」と言います。
この地域の領主が「九鬼(くき)」という名前だったため、
「鬼は外」と言えず、「鬼は内、福は内」という掛け声が採用されたとされています。
福島県の二本松市では「福は内、鬼、外」と言います。
この地域のお殿様が「丹羽(にわ)様」であったため、
「鬼は外」だと「お、丹羽外」聞こえてしまい誤解を避けるために
「鬼、外」という掛け声に変更されました。
他の地域では鬼子母神を祀る風習から「鬼は内」と言うこともあります。
まとめ
節分の食べ物が地域ごとに異なることが、
古くからの伝統や地域性に起因していることがわかりました。
これらの独自の風習は、地域の特産品や文化と結びついているのですね。
節分の時期に各地域を訪れてその地域独自の食べ物を楽しむことは、
日本の多彩な文化を探求する素晴らしい方法です。
各に出掛けてその地域の食べ物を実際に食べてみましょう!!